解雇時の事業所委への説明は十分に

従業員を解雇する際は、事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)102条1項に明記された規則で、この手続きなしに解雇を通告することはできない。このルールに関わる係争(訴訟番号:2 Sa 305/11)でデュッセルドルフ労働裁判所が昨年10月に判決下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は機械系技術サービス会社のプロセス制御技術部署に勤務するエンジニアが同社を相手取って起こしたもの。同社は2017年4月4日、事業再編に伴い従業員190人のうち45人を解雇することを決定した。

経営上の理由で整理解雇を実施する際は「社会的選別(Sozialauswahl)」という、解雇保護法(KSchG)1条3項のルールに基づいて解雇対象者を公正に決定しなければならない。具体的には(1)勤続年数(2)年齢(3)被扶養者がいるかどうか、およびその人数(4)重度の障害があるかどうか――という4つの基準に基づいて選別を行うことになる。

被告企業は社会的選別を行ったうえで、事業所委員会に解雇の理由説明を行った。原告エンジニアの勤務するプロセス制御技術部署に関しては説明に具体性がなかったことから、事業所委は異議を唱えた。

それにもかかわらず被告は6月29日付の文書で原告に解雇を通告したことから、原告は解雇無効の確認を求めてデュッセルドルフ労裁に提訴した。

被告は裁判審理のなかで解雇対象者の選定について初めて具体的に説明した。それによると、原告の勤務部署の受注は長年、減少傾向にあるため従業員4人のうち2人を解雇する必要がある。4人のうち1人は事業所委員であるため法的に解雇が禁止されており、1人は能力が高いため今後も必要な人材である。また、もう一人は昇進したばかりである。このため、狭い意味での「社会的選別」は不要と判断した。

同労裁は10月12日の判決で原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、被告は裁判審理で行った解雇対象者選定の具体的な説明を提訴される前の時点で事業所委に対し行うべきだったと指摘。同委に説明した時点ではそうした具体的な説明を行っていないとして、解雇無効の判断を示した。上訴は認めなかった。

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