総合不動産サービス大手の米JLLは9日、独金融都市フランクフルトのオフィスの新規賃貸面積が昨年は71万1,000平方メートルを超え、2000年に記録した過去最高(69万7,000平方メートル)を突破したと発表した。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定の影響はまだほとんど出ておらず、離脱後は賃貸面積が一段と増える見通しだ。
昨年の賃貸面積は前年をおよそ30%上回った。ドイツ鉄道(DB)とドイツ連邦銀行(中銀)がそれぞれ8万5,000平方メートル、4万4,000平方メートルを賃貸したことが最大の押し上げ要因。このほか事務所のスペースを共有するコーワーキングが計4万6,000平方メートルに上ったことも大きい。ブレグジット絡みの新規賃貸は2万5,000~3万平方メートルにとどまった。
今年は新規賃貸面積が減少するものの、英国がEUから離脱するとロンドン勤務の金融マンが数多く押し寄せる見通しのため、19年~20年には増加が見込まれる。英国は19年3月29日に離脱。離脱後の移行期限は20年末となる見通しだ。
フランクフルトでは金融マンの流入を見越して、インターナショナルスクールや現地私立学校の定員の一部を事前予約する動きが、金融業界で出始めている。地元紙によると、ロンドンから最大4,000人を同市に異動する予定のドイツ銀行は、行員の子弟およそ数百人向けに来年度(9月始業)の入学権を確保した。米ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、JPモルガンも同様の動きを見せているという。
フランクフルトのレーデルハイム地区にあるインターナショナルスクール「メトロポリタン・スクール」の校長は同紙に、生徒の需要が10%増えたことを明らかにした。近郊のバート・ホムブルクにある「アカディス・インターナショナルスクール」でも問い合わせが10~15%増えている。
フランクフルトでは人口の増加に学校数・定員が追いつかない状況が続いていることから、ブレグジットで行員の子弟が転入してくると状況は一段と悪化する懸念がある。