従業員の代表である事業所委員(Betriebsrat)や同委員を選出する選挙の選挙管理委員を解雇することは、解雇保護法(KSchG)15条で原則的に禁じられている。事業所委員などは職務上、経営者と対立して報復を受けやすい立場にあるためで、解雇が可能なのは解雇がやむを得ない重大な理由がある場合、つまり即時解雇が可能な場合に限られる(解雇予告期間を設定した通常解雇は出来ない)。
即時解雇を行う場合は、事業所委員会の承認を受けなければならないことが、事業所体制法(BetrVG)103条1項に明記されている。同委が承認を拒んだ場合は、裁判所の代替承認手続きを通して即時解雇を貫徹する可能性が雇用主に残されている(同条2項)。
これらのルールに絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:2 AZR 14/17)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はホテル附属の会議場を運営する企業を相手取って社員Aが起こしたもの。同社は事業所委員長だったAが業務命令をかたくなに拒否したことから即時解雇方針を固め、事業所委員会に承認を求めたものの、拒否されたため裁判所に代替承認を申請した。
同社の申請はバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所の2015年7月16日の決定で認められた。裁判所は即時解雇にゴーサインを出したわけである。同決定は8月4日、裁判当事者に送達され、9月5日付で発効した。
同社は裁判所の決定(7月16日)を受けて8月10日付の文書でAに即時解雇を通告。念のために同決定発効(9月5日)後の9月7日付の文書でもう一度、即時解雇を通告した。
一方、Aは8月3日付で事業所委員長を辞任した。これに伴い事業所委員長職が空席となったことから、新たな事業所委員長を選出するための選挙が行われることになり、Aは選挙管理委員長に任命された。
Aはこうした一連の活動(策動)をしたうえで、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。Aはその根拠として(1)バーデン・ヴュルテンベルク州労裁は事業所委員長としてのAの即時解雇を承認したのであり、選挙管理委員長としてのAの即時解雇は承認していない(2)Aは8月3日付で事業所委員長を辞任したことから、同州労裁の決定は無効(gegenstandlos)になった――と主張した。
即時解雇を巡る係争で一審のプフォルツハイム労働裁判所は原告の訴えを全面棄却した。一方、二審のバーデン・ヴュルテンベルク州労裁は、9月7日付の即時解雇を妥当としたものの、裁判所の即時解雇決定が発効する前の8月10日付の即時解雇については、事業所委員会の承認も裁判所の承認も受けていないとして無効を言い渡した。
最終審のBAGは二審判決を支持し、原告は9月7日付の文書に基づいて即時解雇されることが確定した。BAGの裁判官は判決理由のなかで、裁判所が原告の即時解雇を代替承認したのは、原告が業務命令拒否という重大な義務違反を行ったからであり、原告が事業所委員長を辞任し選挙管理委員長に就任したからといって代替承認の効果はなくならないとの判断を示した。