一般世帯のソーラー発電を利用した仮想発電所を運営する独ゾンネン(ヴィルトポルツリート)が電気自動車(EV)などの電動車を対象に電力を販売する計画だ。電動車の普及率が今後高まると、電力の需要に供給が追い付かず広域停電(ブラックアウト)が発生しやすくなることから、電動車の保有世帯に仮想発電電力を供給することで、そうしたリスクを低減する考えだ。フィリップ・シュレーダー社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにした。
「ゾンネン・フラット」という新商品を3月末に市場投入する。料金は月29.99ユーロで、年8,000キロワット時(kW時)の電力を提供する。同社長は8,000kW時のうち5,000kW時を家屋に、残り3,000kW時を電動車に振り向ける事例を提示。3,000kW時の電力があれば年1万7,000キロ弱の走行が可能であり、ガソリン車(100キロ走行に要する燃料7.5リットル)に比べて費用を年1,850ユーロ節約できると説明した。
同社は当初、独自開発のソフトウエアを用いて◇太陽光発電システムと蓄電池をともに持つ世帯をネットワーク化する◇過剰な電力を持つ世帯から電力が不足する世帯に電力を融通する――という方式で事業を展開。昨年からは3,999ユーロの蓄電池を購入したうえで会費(月19.99ユーロ)を支払う顧客に年2200キロワット時(kW時)の電力を10年間、無料で提供するサービスも開始した。ゾンネン・フラットはEVなどの今後の普及拡大をにらんだ新たなサービスとなる。
仮想発電は家屋の太陽電池など小規模な発電設備をネットワーク化し、あたかも1つの発電所であるかのように機能させることを指す。シュレーダー社長は再生可能エネルギー電力の買い取り価格引き下げを受けて仮想発電に参加する世帯が今後、増えていくと予想している。