遺族企業年金の「年齢差」ルールは違法な差別か

企業年金の受給資格がある夫ないし妻が死亡した場合、配偶者は基本的に遺族企業年金を受給できる。では死亡した被用者と配偶者の年齢差が一定水準以上の場合は同年金を支給しないとするルールは違法な差別に当たるのだろうか。この問題を巡る係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が20日の判決(訴訟番号:3 AZR 43/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業で働いていた被用者の妻が起こしたもの。1968年生まれの原告妻は1995年に18歳年上の同被用者と結婚した。同被用者は2011年に死亡した。

被告企業は死亡した被用者の配偶者が夫(妻)より16歳以上、若い場合は遺族年金を支給しないルールを採用していたことから、原告への遺族年金支給を拒否。原告はこれが年齢による差別を禁止した一般平等待遇法(AGG)に違反するとして提訴した。

原告は下級審で勝訴したものの、最終審のBAGは逆転敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、死亡した被用者と配偶者の年齢差が一定水準以上である場合は遺族年金を支給しないことは年齢による直接的な差別に当たるとしながらも、企業の財務リスクを軽減するという雇用主の正当な利害を踏まえると必要かつ妥当な措置だと指摘した。また、年齢差が16歳以上の夫婦であれば寡婦(寡夫)が配偶者の死亡後も長く生きることを前提に生活を設計しており、遺族年金の不支給はその意味でも妥当だとの判断を示した。

遺族年金不支給が許容される年齢差については具体的な数字を示さなかった。BAGの広報担当者はメディアの問い合わせに「個々のケースにより異なる」と回答した。遺族年金に関する取り決めの内容にかかっているとしている。

なお、結婚時点での被用者の年齢が高い場合に、寡婦・寡夫となった配偶者に遺族年金を支給しない「晩婚ルール」に関しては、AGGで禁じられた不当な高齢者差別に当たり違法だとする判断を、BAGは15年の判決(訴訟番号:3 AZR 137/13)で示している。

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