独ハンブルク州とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の州立銀行であるHSHノルトバンクは2月28日、両州とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の貯蓄銀行連合会が同行株94.9%を投資会社サーベラスやJ.C.フラワーズなど計5社に10億ユーロで売却する契約に調印したと発表した。同行は経営危機に陥り両州の支援を受けた際に、欧州連合(EU)の欧州委員会から民営化を義務づけられていたことから、今回の契約が締結された。欧州委と独金融監督庁(BaFin)、両州議会が承認すれば、取引が実現する。売却手続きは4~9月に完了する見通し。
HSHノルトバンクは両州の州立銀の合併で2003年に設立された。公的金融機関の倒産を防ぐ公的保証制度が近い将来に廃止されることになっていたいため、地域経済の振興に向けた融資という本来の業務から逸脱。グローバルプレイヤーになることを夢見て米不動産市場やリスクの高い金融商品への投資を積極的に展開した。
08年にリーマンショックが発生すると、経営はにわかに悪化。ハンブルク、シュレスウィヒ・ホルシュタイン州政府は同行の要請に応じて100億ユーロの融資保証と30億ユーロの資本増強を実施した。
欧州委はこれを認める条件として、同行の民営化を命じた。2月末までに民営化のメドをつけなければ同行は清算されることになっていたため、両州は今回、期限ぎりぎりで売却契約を締結した。
同行株94.9%を取得したのは米投資会社サーベラス(40.33%)と同社の墺子会社BAWAG(2.37%)、米J.C.フラワーズ(33.21%)、ゴールデン・ツリー(11.86%)、英ケンタウルス・キャピタル(7.12%)の5社。J.C.フラワーズはすでに5.1%を保有していることから出資比率は38.31%となる。
ハンブルクとシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州は今回の取引で計110億~140億ユーロの損出を計上する見通し。