スイス製薬大手のノバルティス(バーゼル)は9日、遺伝子治療薬開発の米エイベックシスを買収することで両社が合意したと発表した。自社の当該事業を強化する考え。買収手続きが年央までに完了すると見込んでいる。
エイベックシスを株式公開買い付け(TOB)で買収する。買い取り価格は1株当たり現金218ドルで、前営業日に当たる6日の終値を88%上回る水準。買収総額は87億ドルと大きく、ノバルティスは買収資金の一部を合弁会社の持分売却で賄う考えだ。ノバルティスは3月下旬、一般医薬品分野でグラクソ・スミスクライン(GSK)と共同で設立した合弁の資本36.5%を現金130億ドルでGSKに譲渡することを明らかにした。
エイベックシスは遺伝子疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬「AVXS-101」を開発している。同疾患の患者15人を対象に実施した第一層臨床試験では投与後2カ月で全員が完治した。米食品医薬品局(FDA)から画期的治療薬の指定を受けており、来年にも同国に市場投入される見通しだ。欧州と日本でも同様の指定を受けており、ピーク時の売上高は年数十億ドルに達すると見込まれている。
SMA治療薬の分野では米バイオジェンの「スピンラザ」がすでに米国と欧州で販売承認を受けた。また、アステラス製薬とスイスのロシュが新薬開発に取り組んでいる。