製薬・化学大手の独バイエル(レバークーゼン)は11日、デジタル農業事業を独競合BASFに譲渡することを明らかにした。米農業化学大手モンサントを買収するために当局から要求されたためで、一部の種子処理剤事業についても他社に売却する。どの国の当局から売却を命じられたかは明らかにしていないが、状況からみて米司法省と目されている。
バイエルは2016年9月、モンサントを最大660億ドルで買収することで合意した。これによって同社の農業化学部門クロップサイエンスの売上高は2倍に拡大し、同分野で圧倒的な首位となる。
主要な認可当局のなかでは欧州連合(EU)の欧州委員会が農薬・種子事業の一部と野菜種子事業をBASFに売却することなどを条件に先月、買収を承認した。
デジタル農業は耕地に設置したセンサーで得られるデータや天気予報など莫大な情報を解析したうえで肥料、農薬投入などの量や時期を最適化する農業管理手法を指す。市場規模は小さいものの、将来性は極めて大きく、バイエルとモンサントはそれぞれ同事業に注力してきた。
欧州委はバイエルがモンサントを買収すると、デジタル農業分野でバイエルの力が強くなりすぎる恐れがあると懸念。買収承認の条件としてバイエルのデジタル農業用プラットフォームに競合BASFが独占的にアクセスできるようにすることを命じた。
米法務省はバイエルに対しさらに踏み込んだ措置を要求したもようで、同社は自社のデジタル農業事業をBASFに売却することにした。売却後はライセンス料を支払ったうえで、同プラットフォームにアクセスするようになる。
バイエルはデジタル農業と種子処理剤事業の部分売却命令に従う見返りとして、モンサントの殺虫剤「ネマ・ストライク」の売却計画を撤回することを明らかにした。
欧州委は同日、モンサント買収に伴うバイエルの今回の売却計画変更を承認した。