再生可能エネルギー電力を用いて水から水素を作り出すパイロット施設の建設が、墺鉄鋼大手フェストアルピーネのリンツ工場で16日に始まった。二酸化炭素(CO2)の発生を削減・回避する形で水素と鉄鋼を生産する技術の開発と、再生エネ貯蔵の選択肢拡大に向けたプロジェクト「H2フューチャー」の一環で、フェストアリピーネ、独電機大手シーメンス、墺発電大手フェアブントなどが参加している。投資資金1,800万ユーロのうち1,200万ユーロを欧州連合(EU)が助成する。
水から水素を取り出すプロトン交換膜電解(PEM)モジュールはシーメンスが提供する。消費電力は世界最大の6メガワットで、1時間当たり1,200立方メートルの水素を製造できる。変換効率は約80%で、シーメンスが独マインツに設置した設備(60~70%)を大きく上回る。2019年春のフル稼働を予定している。
水素生産の電力はフェアブントが供給する。在来型発電の電力を用いると発電の際にCO2が排出され、環境に負荷がかかることから、それを回避するために100%再生エネ由来の電力を提供する。フェアブントは揚水発電、蓄電に続く再生エネ貯蔵の新たな方法を開拓するためにプロジェクトに参加した。
プロジェクトでは同モジュールで生産した水素を鉄鋼生産の様々な過程に投入できるかどうかを検証していく。
鉄鋼生産では鉄鉱石中の酸素を除去(還元)するために石炭、コークスが用いられている。だが、石炭、コークスを用いて鉄鉱石を還元するとCO2が発生することから、フェストアリピーネは長期的に、再生エネで生産したグリーンな水素へと還元剤を切り替えていく考えだ。鉄鋼生産に伴うCO2の排出量を50年までに80%削減する目標を掲げている。