オペル―コスト削減で労使対立が先鋭化―

仏自動車大手PSAの独子会社オペル(リュッセルスハイム)で労使の対立が激化している。コスト削減と工場への新規投資をめぐる交渉で両者の立場が大きく隔たっているためだ。従業員代表の事業所委員会と金属労組IGメタルはメディアを通して雇用者側が脅しに等しい不当な要求を突き付けていると喧伝しており、多くの政治家は懸念を表明。メルケル首相はPSAに対し、オペルを買収した際の約束を守るようくぎを刺した。

オペルは昨年8月、PSAの子会社となった。オペルは過去20年間、ほぼ一貫して赤字経営が続いていることから11月に業績改善計画を発表。PSAへの傘下入りに伴うシナジー効果を調達から販売に至るすべての事業過程で引き出す方針を打ち出した。まずは20年までに年11億ユーロを実現し、黒字転換を図る計画だ。

人件費の削減は整理解雇を回避する形で実現することをIGメタル、事業所委との間で取り決めた。ただ、労組・事業所委によると、経営側は現在行っている交渉でクリスマス・有給休暇手当と、業界労使が取り決めた4.3%の賃上げの放棄を要求。また、アイゼナハ工場での新SUV生産に向けた投資決定を無期延期している。

オペルのミヒャエル・ローシェラー社長はこれに反論しているものの、労組・事業所委は経営側の主張を「プロパガンダ」として否認。どちらの主張がどこまで正しいかが分からない状況となっている。

ただ、同社が業績目標を達成できなければ、痛みを伴う措置が避けられなくなる見通しだ。デュースブルク・エッセン大学自動車研究センター(CAR)のフェルディナント・ドゥーデンフェファー所長は経済紙『ハンデルスブラット』に、オペルの工場は生産効率が低く競争力がないと指摘。アイゼナハ工場とカイザースラオターン工場のどちらかが閉鎖される可能性もあるとの見方を示した。

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