被用者が勤務とは関係のないところで犯罪を行った場合、雇用主は解雇することができるのだろうか。この問題を巡る係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が12日に判決(訴訟番号:11 Sa 319/17)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は化学メーカーのラボに勤務する社員が同社を相手取って起こしたもの。同社員は品質管理部署でシリコンを検査するための試験台の作製と検査を担当していた。
同社員は2016年4月に爆破未遂事件を起こし、8月13日に有罪判決を受けた。警察の家宅捜査では自宅から危険な化学物質1.5キログラムと麻酔薬1キログラムが見つかっている。
この事実をマスコミ報道で知った被告は9月1日付の文書で即時解雇を通告。翌年5月26日になって念のために6カ月の解雇予告期間を設置した同年末付の通常解雇も通告した。
原告社員は即時解雇を不当として提訴した(通常解雇については裁判を起こしたかどうか不明)。
この即時解雇を巡る係争では1審が原告勝訴を言い渡したものの、2審のデュッセルドルフ州労裁は逆転敗訴判決を下した。判決理由で同州労裁の裁判官はまず、勤務外の行動を理由に被用者を解雇できるのは適正と信頼性が失われた場合に限られると指摘。解雇の判断に際しては(1)犯罪の種類と重さ(2)労働契約で具体的に義務づけられた業務の内容(3)職場でのポジション――の3点を考慮しなければならないとの基準を示した。
そのうえで原告について、被告企業で危険な化学物質にアクセスできる状況にあったものの、労働契約で定められた業務である品質検査でそうした危険物質が使われることはないと指摘。また勤続期間が約25年と長いことも挙げ、即時解雇は不当な処分だとの判断を示した。
通常解雇が有効かどうかについては、今回の裁判の対象となっていないことから判断を示さなかった。
最高裁である連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。