化学大手の独BASF(ルートヴィヒスハーフェン)は4月26日、競合バイエルから種子・農薬関係の事業と資産を取得することで合意したと発表した。BASFは昨年10月にもバイエルの農業化学事業の部分買収を取り決めており、買収対象となるバイエルの事業が拡大することになる。
バイエルは2016年9月、モンサントを最大660億ドルで買収することで合意した。これに関して欧州連合(EU)の欧州委員会は17年、農薬、野菜の種子などの分野で両社が大きなシェアを持ち、特に雑草に効力があるが作物には影響を及ぼさない選択性除草剤で競争が阻害される恐れがあるとして承認を見送り、本格的な調査を進める方針を打ち出した。
バイエルは欧州委が指摘する競争上の問題に対応するため、10月に農薬・種子事業の一部をBASFに現金59億ユーロで売却することで合意。さらに、追加で何らかの措置を講じる意向を表明し、今年3月に野菜種子事業などをBASFに追加譲渡する方向で独占交渉を行っていることを明らかにしていた。
BASFは今回の取引でバイエルから(1)「ヌンヘムス(Nunhems)」ブランドで世界的に販売されているすべての野菜種子事業(2)「ポンチョ(Poncho)」「ボーティボ(VOTiVO)」「コペオ(COPeO)」「イレボ(ILeVO)」ブランドで販売されている種子処理製品(3)小麦交配種の研究開発プラットホーム(4)最新のデジタル農業プラットホーム「エクサルビオ(xarvio)」を譲り受けることを取り決めた。この取引にはバイエルのオーストラリアにおける菜種事業、主に非農耕地で利用される欧州における特定のグリホサートを用いた除草剤、キャノーラ品質カラシナの研究、特定の非選択性除草剤と殺線虫剤研究プロジェクトが含まれる。
BASFはこれら事業を現金17億ユーロ(取引実行時に調整の可能性あり)で取得する。昨年10月の合意と合わせると取引額は76億ユーロに上る。
バイエルはデジタル農業プラットホームの売却を当初、予定していなかったが、米司法省の要求を受けて売却対象に追加したもようだ。
欧州委は30日、BASFがバイエルから種子・農薬事業を追加取得する取引を承認すると発表した。BASFが非選択性除草剤研究プログラムと、開発中の殺線虫剤「トルネムコ(Trunemco)」を売却することを条件としている。