ドイツ銀行―航空券決済システムでカード業界に宣戦―

独銀最大手のドイツ銀行(フランクフルト)は7日、航空チケットの新しい決済システムを開発することで、世界の航空会社の業界団体である国際航空運送協会(IATA)と合意したと発表した。クレジットカードやデビットカードを利用したこれまでの決済方式に比べて低コストで安全なサービスを提供し、航空会社の財務負担軽減につなげる意向だ。

チケットを予約した顧客の銀行口座から航空会社に料金がリアルタイムに直接、支払われるシステムを開発する。認証にはパスワードともう一つの要素を組み合わせた二要素認証を採用。詐欺のリスクを低減させる。

IATA加盟の航空会社が決済と詐欺対策に支払う費用は推定で年およそ80億ドルに達することから、ドイツ銀が開発するシステムの利用により航空会社はコストを大幅に削減できる。世界の航空会社の純利益が昨年、合わせて345億ドルだったことを踏まえると、同システムのコスト削減効果は極めて大きい。

同システムは欧州連合(EU)の新決済サービス指令(PSD2)が2016年に発効したことから投入が可能になった。同指令は顧客が許可している場合、顧客データを銀行外部に提供することを当該行に義務づけるというもので、ドイツ銀は同行以外の銀行からでも航空料金を代理徴収できることになる。

同決済システムの利用料金がどの程度になるかは不明だ。ただ、航空チケットの決済で現在主流のクレジットカードよりも安いのは確実とみられ、カード会社は大きな収入源の1つを奪わる恐れがある。

ドイツ銀は収益力の低迷に苦しんでおり、クリスティアン・ゼーヴィング新頭取は4月下旬の決算発表で、安定収益を確保できる事業の強化方針を打ち出した。航空チケット決済サービスはこれに合致した事業で、業績改善に向けた具体的な一歩と言えそうだ。経済紙『ハンデルスブラット』によると、ドイツ銀は同様の事業モデルの構築に向けて鉄道会社、食品大手とも協議を進めているという。

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