大口需要家の送電料金免除は違法、欧州委が免除額の追徴を独に命令

欧州連合(EU)の欧州委員会は28日、ドイツの大口需要家が2012年から13年にかけて送電料金を全額免除されていたことはEUの助成金規則に抵触するとして、免除措置を受けた需要家からの料金追徴を同国に命じた。ドイツ政府は命令受け入れの姿勢を示しており、優遇を受けた企業は今後、支払いを要求されることになる。

送電料金は電力料金の一部としてすべての需要家が負担することになっている。ドイツでは再生可能エネルギーの普及促進政策の影響で電力料金が上昇したことから、政府は金属や化学など電力集約型の企業の国際競争力が低下することを懸念。年間電力消費量10ギガワット時以上の大口需要家を対象に送電料負担を全額免除するルールを11年に導入した。

これを受け消費者団体などが欧州委に苦情を申し立てたことから、同委は13年3月に調査を開始していた。

マルグレーテ・ヴェスタエアー欧州委員(競争政策担当)は声明で、すべての需要家が支払わなければならない送電料金の負担を大口需要家だけ免除するのは不公平な優遇措置に当たると批判した。

大口需要家の全額免除措置は11~13年の3年間に渡って行われていたが、欧州委は今回の決定で、免除額を国の財政で負担した12年と13年のみがEU法違反の助成に当たると認定。11年分については送電サービス事業者が負担したことから国による助成に当たらないとして違法性を認めなかった。また、電力消費量が安定している大口需要家の送電料金負担を軽減することについては、合理的な根拠がありEUの助成金規則に抵触しないとの判断を示した。

ドイツは14年の法改正で全額免除ルールを廃止するとともに、送電料の割引を大口需要家が申請できる新ルールを導入した。欧州委はこの新ルールについてはEU法に合致していると判断し、調査を行わなかった。

ドイツ政府は今後、12年と13年に全額免除措置を受けた各需要家が本来支払うべきだった送電料金を算定したうえで、追徴することになる。欧州委によると、追徴額は12年だけで計3億ユーロに上る見通しだ。

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