ディーゼル車の走行禁止措置がドイツ北部のハンブルク市(州)で5月31日に導入された。ディーゼル車の走行が制限されるのは同国で初めて。イエンス・ケルスタン州環境相(緑の党)は記者会見で、旧型ディーゼル車を対象に窒素酸化物(NOx)の排出削減効果が大きい部品(ハード)レベルの修理をメーカーに義務づける措置が導入されれば、走行禁止を速やかに解除できると述べ、同措置の導入を見合わせる連邦政府(国)に圧力をかけた。
走行禁止の対象となるのは旧型ディーゼル車。マックス・ブラウアー通り(580メートル)ではユーロ5以下のディーゼル乗用車とトラック、シュトレーゼマン通り(1.7キロメートル)ではディーゼルトラックが走行できなくなった。配達事業者とバス、消防車および該当区間の住民には適用されない。
当面は禁止の周知徹底を図る考えで、違反しても罰金を徴収しないものの、一定期間の終了後は乗用車で過料20ユーロ、トラックで同75ユーロが科されるようになる。
旧型ディーゼル車を対象にハードレベルの修理を義務づけることについては、連邦政府内で意見が対立している。社会民主党(SPD)のスヴェンヤ・シュルツェ連邦環境相が同修理の義務化を要求するのに対し、キリスト教社会同盟(CSU)のアンドレアス・ショイアー連邦交通相は法的・財務的・技術的に問題があるとして否定的な立場を堅持。キリスト教民主同盟(CDU)のメルケル連邦首相もハードレベルの修理をメーカーに義務づけると自動運転車や電動車向けの投資に支障が出るとして、ショイアー交通相を支持している。
ハンブルク州のケルスタン州環境相はこれを踏まえ、連邦政府は市民の健康よりも自動車業界の利益を重視していると批判。排ガスの不正操作という「自動車業界の詐欺」(同相)と連邦政府の不作為がなければディーゼル車の走行制限措置を導入せずに済んだとして、旧型ディーゼル車の持ち主が不自由な思いをしている責任は国にあるとの見解を強調した。