休暇中や勤務時間外であっても緊急連絡ができるようにするために、被用者に私的な携帯電話番号を知らせるよう要求する企業は多い。では、雇用主にはそもそも私的な携帯番号情報を要求する権利があるのだろうか。この問題を巡る係争でテューリンゲン州労働裁判所が5月の判決(訴訟番号:6 Sa 442/17、6 Sa 444/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は自治体勤務の被用者が同自治体を相手取って起こしたもの。同自治体は緊急事態向け待機勤務システムの変更に伴い、私的な携帯電話の番号を提出するよう被用者に要求した。これに対し一部の被用者が携帯番号の代わりに自宅の電話番号を提出したところ、警告処分を受けたことから、同処分の取り消しを求めて提訴した。
原告は一審で勝訴し、二審のテューリンゲン州労裁でも勝訴した。判決理由で同州労裁の裁判官は、私的な携帯番号を雇用主に知らせると、被用者は常に連絡がつく状態へと陥りくつろぐことができなくなると指摘。被用者の私的領域への深い侵入であり、自己情報コントロール権の侵害に当たることから、テューリンゲン州データ保護法では携帯番号情報の提出を雇用主が要求することはやむを得ない場合に限られるとの判断を示した。被告自治体のケースでは待機勤務システムの変更という雇用主側の措置がきっかけで今回の問題が発生したとして、被告は他の方法(被用者の私的な携帯番号情報の提出以外の方法)で緊急事態に対処しなければならないと言い渡した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。