独西部アーヘン市の大気浄化計画は不十分として環境保護団体ドイチェ・ウンベルトヒルフェ(DUH)が旧型ディーゼル車の走行禁止も盛り込むよう地元ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州政府に求めて起こした裁判で、一審のアーヘン行政裁判所は8日、原告の訴えを認める判決を下した。ドイツでは北部のハンブルク市で5月末から旧型ディーゼル車の走行が一部の区間で禁止。他の都市でも今後、裁判所が同様の措置の導入を命じる可能性があり、ディーゼル車の販売不振は一段と、強まりそうだ。
欧州連合(EU)加盟国は窒素酸化物(NOx)の濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。ドイツではベルリン、ミュンヘンなど多くの都市で同規制を順守できない状況が続いている。各州政府は順守に向けて当該都市を対象とする大気浄化計画を作成したものの、DUHは不十分だと批判。約30の都市の浄化計画に旧型ディーゼル車の走行禁止措置を追加するよう求めて裁判を起こしている。
西南ドイツのシュツットガルト市とNRWの州都デュッセルドルフ市を対象とした係争では、最高裁の連邦行政裁判所が2月、他に手段がない場合はディーゼル車の走行禁止を認める判決を下した。5月に公開された判決文には、個々の道路を対象に欧州排ガス基準「ユーロ5」以下のディーゼル車の走行を即時禁止できることが明記。一定地域全体(ゾーン)の走行禁止についても車両の環境性能によって時期をずらしながら段階的に導入することが認められている。ユーロ5対応ディーゼル車のゾーン内走行禁止措置は早ければ来年9月から実施できる。
アーヘン行政裁は最高裁のこの判断に基づいて今回の判決を下した。判決理由で裁判官は、環境保護区域の拡大や排ガス性能向上に向けた乗り合いバスの修理、公共交通機関の促進を内容とする州政府の大気浄化策ではEUのNOx基準を速やかに遵守することはできないと指摘。旧型ディーゼル車の走行を来年1月1日から禁止することは98%の確率で避けられないとの判断を示した。
NRW州は控訴できるため、判決は確定していない。ただ、控訴審でも同様の判決が出れば、走行禁止措置を導入せざるを得なくなる見通しだ。