シーメンス―次世代高速鉄道開発、低コストなどが売り―

電機大手の独シーメンス(ミュンヘン)は13日、高速鉄道「ヴェラロ」の次世代モデル「ヴェラロ・ノボ」を9月の業界見本市イノトランス(ベルリン)で公開すると発表した。同モデルは長距離バス・航空会社との競争に苦しむ鉄道会社のニーズを踏まえて開発したもので、低コストと内装の柔軟性を売りにしている。

鉄道会社は格安航空会社やバス会社の低料金攻勢を受けて利用者が減少。また、航空会社は内装の工夫を通して利用者を引き寄せている。

鉄道会社がこれに対抗するためにはコストの引き下げと内装の改善が必要となっていることから、シーメンスはこれらの点に留意してヴェラロ・ノボを開発した。具体的には車両の15%軽量化や空気抵抗の低減を通して省エネを実現。時速300キロで走行した場合の電力消費量を現行ヴェラロに比べて最大30%削減することに成功した。メンテナンス費用も30%圧縮できることから、鉄道会社は運賃を低く設定しやすくなる。

航空機の内装は顧客の航空会社が自ら決めることができる。シーメンスはこの原理(空チューブ原理)をヴェラロ・ノボに採用。鉄道会社が内装を自由に設定できるようにした。

ヴェラロ・ノボは運行速度が時速250~360キロ。シーメンスは同モデルの開発を2013年に開始した。今年4月からドイツ鉄道(DB)の高速鉄道「ICE」に連結して試験運行を行っており、2023年から市場投入する考えだ。DBは購入に関心を示しており、すでに協議を行っている。

ただ、ヴェラロ・ノボの投入に対してはシーメンスの鉄道車両・設備部門と仏同業アルストムが進める合併計画の足かせになるとの懸念が出ている。アルストムも独自の次世代高速鉄道「アヴェリア」を開発しているためだ。動力分散方式のヴェラロ・ノボに対し、アヴェリアは動力集中方式を採用することから、部品調達でのシナジー効果をほとんど期待できないとみられ、合併のメリットが減る恐れがある。

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