病休時の給与支払い、不払い企業への請求に除斥期間は適用されるか

被用者が病気になった場合でも雇用主は最初の6週間、給与を支給しなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(略:EntgFGないしEFZG)」3条1項第1文に定められたルールである。支給額は正規の労働時間(つまり残業を含まない)で得られる給与相当額である(同4条1項)。このルールに絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が20日に判決(訴訟番号:5 AZR 377/17)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は時給13ユーロで働いていた建設会社の元社員が同社を相手取って起こしたもの。同社は2015年10月末付で同社員を解雇することを、9月17日付の文書で通告した。同社員は解雇通知の受領後、病気休業し解雇日まで会社を休んだ。

同社は同社員に9月の給与を支給したものの、10月分は支給しなかった。このため同社員は16年1月18日に送達された文書で10月分の支給を要求した。これに対し同社は、雇用関係から発生するあらゆる権利は支払い期日から2カ月以内に請求しないと無効になるとした、建設業界労使協定の除斥(じょせき)期間規定を根拠に支払いを拒否したため、原告は提訴。同除斥期間規定は無効であり、被告建設会社には10月分の給与を支給する義務があると訴えた。

この訴えで原告が根拠としたのは「最低賃金の請求権を下回る、あるいはその行使を制限・排除する取り決めは無効である」とした最低賃金法(MiLoG)3条第1文の規定だ。業界労使協定の除斥期間規定が否認する権利には最低賃金の請求権も含まれることから、同規定は無効だという論法である。

第1審と第2審はMiLoG3条第1文の規定を踏まえて原告の主張を一部認める判決を下し、最低賃金相当額(2015年当時は1時間当たり8.5ユーロ)の原告への支払いを被告に命じた。最低賃金を超える部分(原告のケースでは1時間4.5ユーロ)については除斥期間規定が適用されるとして、支払い義務がないとの判断を示した。

これを不服として被告は上告したものの、最高裁のBAGは訴えを退けた。判決理由で裁判官は、◇被用者は病休時でも働いたとみなされることから、最低賃金は病休時に支給する賃金の下限額となる◇賃金の最低水準を保障するというMiLoG3条第1文の趣旨を踏まえると、病休時にも最低賃金水準の賃金支払いが保障されなければならない――と指摘。病休の被用者に対する最低賃金水準の賃金支給を制限する限りにおいて、係争の対処となった建設業界の除斥期間規定は無効だとの判断を示した。

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