自動車シート大手の独グラマー(アムベルク)は28日、筆頭株主である中国の車両内装部品メーカー寧波継峰汽車零部件が同社を対象に実施した株式公開買い付け(TOB)で出資比率を従来の25.56%から84.23%へと引き上げることに成功したと発表した。寧波継峰の出資比率は重要決議の実現に必要な75%のハードルを超えていることから、他の株主に制約されることなく経営を行えるようになる。
グラマーに対してはボスニアの事業家ハスター家が乗っ取りを図ったことから、グラマーは昨年2月に寧波継峰と戦略提携合意。寧波継峰は同5月に株式を取得した。その後、出資比率を引き上げていき、今年6月25日にTOBを開始した。
当初はTOBに対する他の株主の反応が思わしくなかったことから、寧波継峰はTOBの成立に必要な持ち株比率を引き下げるとともに、同終了期日を7月23日から8月6日へと2週間延長。最終的にはハスター家もTOBに応じた。
ハスター家は複数のサプライヤーを傘下に持つ。2016年にVWへの部品供給を拒否し、VWの生産ラインを停止させたことで一躍、有名になった。ダイムラーとも裁判で争っていることから、同家がグラマーの買収を図ったことを受けて、同社の受注は大幅に落ち込んでいた。ハスター家がグラマーから撤退することで、同社の受注は回復するとみられる。
グラマーは声明で、今後は熱可塑性樹脂部品製造の米トレド・モールディング・アンド・ダイ(TMD)を自社に統合するとともに、寧波継峰との協業を深化させ、北米、アジア事業を強化する意向を示した。
寧波継峰との間ではグラマーの雇用と事業拠点を買収後も維持することや知財権、ノウハウ、同社の独立性を保証することですでに合意済み。フランクフルト証券取引所での上場は今後も継続する。