人工クモ糸繊維の開発を手がける独バイオ企業アムシルク(マルティンスリート)が近い将来、量産化技術を確立する見通しだ。イェンス・クライン社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにした。ファッション、自動車、航空宇宙など幅広い業界が関心を示しているという。
同社は10年前、大腸菌に遺伝子を組み込むことで人工クモ繊維を作り出すことに成功した。大腸菌は白い粉を生成。これをジェル化したものは化粧品の原料として量産技術を確立し、すでに「トゥルーシルク」ブランドで販売している。
大腸菌の白い粉を繊維化した製品(人工クモ繊維)も開発しており、「バイオスチール」というブランド名を付けた。同繊維は極めて軽量であるとともに引裂強度が強い。また、3~4週間で生分解できる。
スポーツ用品大手のアディダスは同繊維を用いたシューズの試作品「フューチャークラフト・バイオファブリック」を2016年に公開した。ただ、バイオスチールの量産化技術が確立されていないことから、同シューズの市販化は足踏み状態が続いている。クライン社長は、アディダスとは量産化の可能性を現在も共同で模索していることを明らかにした。
同社は製薬やバイオ分野に特化した独投資会社ATニューテックの子会社となっている。日本のスパイバーや米ボルト・スレッズも同様の繊維を開発していることから、アムシルクは早急に量産化を実現したい考えだ。