通常解雇できない被用者の解雇で最高裁判断

雇用者団体と労働組合が締結する労使協定には解雇予告期間を設定した被用者の通常解雇を禁じる条項がしばしば含まれている。そうしたルールが適用される企業では、民法典(BGB)626条の「重大な理由に基づく即時解雇(Fristlose Kündigung aus wichtigem Grund)」規定を根拠に解雇を行う以外に解雇の手立てがない。

このBGB626条に基づく解雇では即時解雇せざるを得ないほどの重大な理由が必要となることから、通常解雇に比べて解雇のハードルが高い。つまり、雇用主の側からみれば、被用者を解雇しにくいことを意味する。この問題に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月の判決(訴訟番号:2 AZR 6/18)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は非熟練の介護助手として働く中度の障害者が雇用主であるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州を相手取って起こしたもの。

同介護助手は精神疾患を理由に2011年9月29日から13年3月28日まで病休を取得した。その後も最大10日の比較的短い病休を頻繁に取得したことから、雇用主は人件費負担(病欠時の賃金継続支給)が重すぎると判断。被用者代表機関の承認を得たうえで、17年3月31日付の重大理由解雇を同介護助手に通告した。重大理由解雇を選んだのは、労使協定で通常解雇が禁じられているためだ。

原告はこれを不当として、解雇無効の確認を求める裁判を起こし、一審と二審で勝訴した。二審のケルン州労働裁判所は原告に対する病欠時の賃金継続支給は解雇を正当化する重大な理由に当たらないとの判断を示した。

NRW州はこれを不服として上告。最終審のBAGは二審判決を破棄し、裁判をケルン州労裁に差し戻した。判決理由でBAGの裁判官は、年の勤務日の平均3分の1超を欠勤することがほぼ確実と予想され、その間の賃金を雇用主が継続支給しなければならないケースでは即時解雇を正当化する重大な理由が存在すると指摘。ケルン州労裁に対し、原告の病休日数と被告が負担した病欠時の賃金継続支給の額を明確化したうえで、判決を下すよう指示した。

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