移民法案を閣議了承、人材不足解消へ

ドイツ政府は12月19日の閣議で、専門人材受け入れ法案を了承した。ドイツでは雇用の拡大と少子高齢化の進展を受けて企業の人手不足が深刻化し、経済の足かせとなっていることから、政府は同国初の本格的な移民法を作成し、欧州連合(EU)域外からの人材流入を促す考えだ。議会の可決を経て2020年1月1日付で施行する。

ドイツではこれまで、連邦雇用庁(BA)が「人材不足が深刻」と認定した職種を除いて、国内の失業者を優先採用することが企業に義務付けられてきた。EU域外の人材を採用するためには、国内に適した人材がいないことの証明をBAから受ける必要があり、手間ひまがかかる。採用計画を承認されないリスクもある。

今回の法案には国内失業者の優先採用ルールを原則廃止することが盛り込まれた。このため、企業が採用を決めればEU域外の人材であっても基本的に採用できるようになる。

法案にはまた、専門技能を持つEU域外の人材が訪独して最大6カ月間、求職活動を行えるルールも盛り込まれた。このルールが適用されるのはこれまで、大卒以上の者に限られていた。業務に必要なドイツ語を十分に使えるほか、滞在費用も自弁することが前提となるが、ドイツ全体の求職者数が増えることから、企業にとっては人材を確保しやすくなるメリットが期待できる。

十分な専門技能を持たないEU域外の外国人が職業資格を得るための職場を探すことも認められるようになる。ただ、◇ドイツ語会話ができる◇大学入学が可能な学歴を持つ◇25歳未満――という3条件を満たしていなければならない。

法案にはさらに、難民申請を却下されたものの国外退去を猶予されている難民で、すでに仕事についている者について、一定条件を満たせば正規の滞在資格を与えることも盛り込まれた。仕事を持ちドイツ語もできる難民に同国で生活できるという見通しを与えることが狙い。この政策に対しては難民流入が再び急増するきっかけになるという懸念が保守系与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)内にあることから、差し当たり22年6月末までの時限措置として導入する。

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