すべての被用者には有給で休暇を取得する権利がある。これは有給休暇法(BUrlG)1条に記されたルールである。有給休暇中の給与(Urlaubsentgelt)の額は休暇直前の13週間の平均賃金・給与を元に算出されることが、同法11条第1項第1文に明記されている。同項第3文にはまた、操業短縮の結果、休暇直前13週間の賃金・給与の受給額が減少した場合は、この減少分を有給休暇中の賃金・給与に反映させないことが記されている。つまり、操短で賃金・給与が減っても有給休暇中の賃金・給与は減額されない。
ただし、雇用者団体と労働組合は有給休暇法の多くの規定から逸脱するルールを独自に取り決めることを、同法13条で認められている。有給休暇中の賃金・給与の算出もその1つである。
欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)は、操短による賃金・給与の減少分を有給休暇中の賃金・給与に反映させることを定めた労使協定の規定がEU法に抵触しないかどうかについて12月の判決(訴訟番号:C-385/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はドイツの建設会社ホルツカムに勤務するコンクリート技士トルステン・ハイン氏が同社を相手取って起こしたもの。同氏は操短の適用を受けて2015年に26週間(半年間)、仕事をまったくしなかった。
独建設業界の労使協定では、有給休暇中の給与額を年間の給与支給額に基づいて算出することが取り決められており、操短で年支給額が減少した場合は、有給休暇中の給与も引き下げられることになっていた。
ホルツカムはこれに基づいて、有給休暇中のハイン氏に支給する給与を算出・支給した。操短が半年に及んだことから支給額は大きく目減りしていた。
同氏はこれを不当として提訴。一審のフェルデン労働裁判所はこの係争がEU法にかかわると判断し、ECJの先行判決を仰いだ。
ECJは12月13日の判決で、原告部分勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官はまず、EUではフルタイムで働く被用者は最低4週間の年次有給休暇の取得権があることを確認したうえで、原告ハイン氏が15年に働いたのは半年だったことを指摘。EU法で原告に保障された有給休暇は2週間(14日)になるとして、この14日分については操短に基づく賃金・給与の減少分を有給休暇中の賃金・給与に反映させてはならないとの判断を示した。
ドイツの建設業界では年次有給休暇を計30日としていることから、ここから14日(EU法の保障を受ける部分)を除いた計16日については建設業界の労使協定に基づいて支給することに問題はないと言い渡した。
フェルデン労裁はECJのこの基準に基づいて、原告が受け取る額を算出することになる。