重度の障害を持つ被用者は雇用関係を可能な限り維持することを雇用主に要求できる。これは社会法典(SGB)第9編164条4項(2017年12月末までは同編81条4項)で保障された権利である。この権利に絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月に判決(訴訟番号:6 AZR 329/18)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は経営破綻した企業を相手取って同社に勤務していた重度の障害者が起こしたもの。同社は経営破綻後に組織再編を実施した。それに伴い原告の業務がなくなったうえ、新たに任せる仕事もなかったことから、原告解雇を決めた。
これに対し原告は、重度の障害者を解雇から保護する労使協定と、SGB第9編81条4項(当時)で保障された権利を根拠に、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。
一審と二審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官はまず重度の障害者を解雇から保護する労使協定について、被告企業の経営破綻により同協定は失効したとの判断を示した。
SGB第9編81条4項(当時)で保障された雇用関係を可能な限り維持することを雇用主に要求する権利については、雇用を100%保障するものではないと指摘。原告に適した業務がない以上、解雇はやむを得ないとの判断を示した。重度の障害者を継続雇用するために、組織再編後に不要となる職場を維持したり創設することを雇用主は義務づけられないとしている。