ドイツ政府と独自動車業界の会合が24日、ベルリンの首相官邸で開催された。最大のテーマとなったのは電動車用充電インフラの拡充。メーカーが今後、電動車の新モデル投入を急速に加速していくなかで、いつでもどこでも充電できる環境が欠如していては需要の伸びが想定を大きく割り込みかねないことから、各社の危機感は大きい。同国の二酸化炭素(CO2)削減目標を達成するためには電動車を大幅に増やす必要があることから、政府と自動車業界は充電インフラ問題に連携して取り組む意向だ。
政府は2009年、電動車の分野で世界の主導権を握るために、20年までに100万台を普及させるという目標を打ち出した。普及を後押しするために、16年7月には電動車の購入補助金制度を導入。電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の購入者が3,000~4,000ユーロの補助金を受けられるようにした。
これを受けて、電動車の販売は増えているものの、政府が想定したほどは伸びていない。助成資金が余っていることから、連邦経済省は5月末、支給期間の延長方針を打ち出した。
連邦陸運局(KBA)によると、昨年末時点のEVとPHVの登録残数は15万172台だった。乗用車全体に占める割合はわずか0.3%にとどまる。電動車の普及に向けた政府諮問機関「国家プラットフォーム・エレクトロモビリティー(NPE)」はすでに昨年9月の時点で、100万台の目標達成時期が22年に延びるとの見方を示した。
政府は誰でも利用できる公開型充電ポイント(ケーブル)の数についても20年までに10万カ所に増やすことを政権協定で取り決めた。だが、4月時点の実績は1万7,400カ所にとどまっており、これも絵に描いた餅に終わる見通しだ。
一方、自動車メーカーは電動車の種類と生産台数を大幅に増やす方針で、フォルクスワーゲン(VW)は生産規模を25年までに年300万台へと拡大する。BMWは25日、電動車を25年までに25種類投入するとしていた計画を、2年前倒しの23年に実現する意向を表明した。
欧州最大の自動車市場である足元のドイツで充電インフラの密度が低いことは電動車普及の大きな足かせとなる。このため、自動車メーカーはインフラ整備に自ら乗り出しており、VW、BMW、ダイムラー、フォードの4社は17年、超急速充電ステーションの運営会社イオニティを共同で設立した。20年までに欧州の高速道路と幹線道路沿いに最大出力350キロワット(kW)の高出力充電(HPC)ステーションをドイツ、ノルウェー、オーストリアを中心に約400カ所、設置する計画だ。
30年の電動車利用
最大1000万台強を想定
政府も充電インフラの設置を後押ししており、16年には総額3億ユーロの補助金を支給する方針を決定した。今春にはアンドレアス・ショイアー交通相がこれに上乗せする形で10億ユーロの補助金を20年度予算で要求する考えを表明している。
だが、現時点では十分な効果が出ていない。問題は大きく分けて2つある。
一つは電動車の数が少なく、充電ステーションを大量に設置しても採算が合わないことだ。電動車の増加に伴い解消される可能性はあるものの、これまでのところ「卵が先か、鶏が先か」のジレンマを脱却できないでいる。
充電スタンドの設置コストがかさむため、スタンドの電力販売価格が家庭用電力料金に比べて大幅に高くなることも普及のネックとなっている。
政府と自動車業界は今回、こうした問題の解決に向けた基本計画を策定することで合意した。独自動車工業会(VDA)のベルンハルト・マッテス会長が会合後に明らかにしたところによると、政府と自動車業界は電動車の国内利用台数が30年までに700万~1,050万台に拡大することを前提に、それに見合った充電ステーション網の構築に必要な事項を今後、検討。具体策をまとめ上げていく。
助成金などの財政措置については会合で話し合わなかったという。