独化学労組IG
BCEは18日、9月に始まる次期労使交渉に向けた執行部案を発表した。被用者一人ひとりに「将来口座」という企業負担の貯蓄口座を付与したうえで、被用者が自由に使えるようにすることが柱。この要求を交渉の最重要項目とすることから、賃金引き上げ幅(ベースアップ)については実質増を求めるとするにとどめ、具体的な数値を打ち出していない。
化学業界の労使は昨年9月に協定を締結した際、勤務時間を被用者のニーズに合わせて柔軟化するよう求める労組側の要求を、今年の交渉で協議し具体化していくことを取り決めた。将来口座はこれを受けて労組側が考案したものだ。
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BCEによると、企業は同口座に被用者1人当たり年1,000ユーロを積み立てる。口座には毎年、同額が払い込まれることから、被用者が使用しなければ貯蓄額は増えていくことになる。各被用者はこの貯蓄を金銭として直接受け取るだけでなく、◇短期・長期の有給休暇として取得する◇年金として利用する――など様々な形で自由に使うことができる。
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BCEは昨年の交渉で、各被用者の要望に合わせて労働時間を柔軟化できるルールの導入を要求した。子育てや介護を踏まえたもので、企業は経営の都合で被用者に柔軟性を求めるだけでなく、被用者の必要に応じた柔軟性も認めるべきだと訴えた。
こうした要求は企業の労働体制の抜本的な見直しにつながることから、短期間の労使交渉で合意することはできず、労使は今年の交渉に協議を持ち越すことにした。同労組のラルフ・シコルスキー交渉団長は「社会で自己決定のニーズが高まっている」ことを踏まえて、将来口座構想を打ち出したと説明した。
これに対し化学雇用者団体BAVCのクラウスペーター・シュティラー専務理事は、「より柔軟に勤務することはより少なく働くことを意味しない」として、将来口座が労働時間の減少につながることに警戒感を示した。また、年1,000ユーロの積み立てがベア1.8%に相当することを指摘し、労組の要求は非現実的だと批判した。
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BCEはこのほか、家族の介護などで被用者が生活難に陥ることを避けるために、公的介護保険を補完する「追加介護保険」を企業の負担で導入することも求める方針だ。
同労組は今後、内部の議論を通して具体的な要求内容をまとめ上げ、最終方針を9月19日に決議。30日から交渉を開始する。