個人消費に黄信号、雇用不安強まる

市場調査大手GfKが6月26日発表したドイツ消費者景況感指数の7月向け予測値は9.8となり、6月の確定値(10.1)を0.3ポイント下回った。同指数の悪化は2カ月連続。雇用不安の強まりが背景にあり、この傾向が続くとドイツ経済を長年、底支えしてきた個人消費に陰りが出る恐れがある。

所得の見通しに関する6月の指数(7月向け予測値の算出基準の1つ)は前月を12.2ポイント下回る45.5となり、2017年3月以来の低水準へと落ち込んだ。失職して収入が大きく落ち込むことを懸念する人の増加が反映された格好だ。特に、世界的な景気の冷え込みや米国との通商摩擦にさらされる自動車業界で失業不安が強まっている。内燃機関車から部品点数の少ない電動車への移行が今後、本格化し、多くの自動車メーカー、サプライヤーで人員削減が避けられなくなる見通しも追い打ちをかけている。

労働市場の減速は他の景気指標にも現れている。Ifo経済研究所が同日発表した6月のドイツ雇用指数(2015年=100)は100.0となり、16年6月以来(3年来)の低水準を記録した。同指数は昨年8月を直近のピークに下落傾向が続いている。

同指数を強く押し下げているのは製造業だ。同業界では人員削減を計画する企業の割合が人員拡大を計画する企業を4カ月連続で上回った。人員拡大企業の割合から人員削減企業の割合を引いたディフュージョン・インデックス(DI)はマイナス8.3ポイントに達し、マイナス幅は前月の5.7ポイントから拡大した。

連邦雇用庁(BA)が1日発表した6月の失業者数は前月を2万人下回る221万6,000人へと縮小したものの、減少幅は過年度に比べて小さい。5月は例年に反して失業者が増加しており、労働市場の変調は鮮明だ。BAのデートレフ・シェーレ長官は「雇用拡大の勢いは失われた」と明言した。季節要因を加味した実質でも減少幅は1,000人にとどまる。失業率(名目)は横ばいの4.9%だった。

操短は3倍以上に

操業短縮の動きは広がっており、操短の対象となった被用者の数は4月に4万4,000人(暫定値)へと達し、前年同月(1万3,000人)の約3.4倍に拡大した。

人員削減に踏み切る企業も増えており、自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は国内で7,000人を整理。フォード(自動車)、バイエル(ライフサイエンス)、ティッセンクルップ(複合企業)、BASF(化学)など他の大手メーカーも4ケタ台の削減を計画している(表を参照)。景気の緩衝材として利用される派遣社員がその影響を特に強く受けている。

6月求人件数は79万8,000件で、前年同月から8,000件減少した。季節要因を加味した前月比は4,000件減となり、3カ月連続で縮小。求人指数BA-Xは横ばいの248となった。前年同月比では減少幅が6ポイントに上る。求人指数自体は今のところ高い水準を保っている。

GfK消費者景況感指数を構成する景気の見通しに関する6月の指数(7月向け予測値の算出基準の1つ)は前月を0.7ポイント上回る2.4となり、18年初頭から続く下落傾向にひとまず歯止めがかかった。ただ、水準自体は低く、前年同月を17.0ポイント割り込んでいる。

高額商品の購入意欲に関する6月の指数(同)は53.7となり、前月を3.2ポイント上回った。水準はこれまでに引き続き極めて高い。ただ、失業懸念の強まりが今後も続くようだと、消費者の財布のひもは固くなるとGfKは予想。個人消費が今年は1.5%増加するとした年初予測の下方修正が避けられなくなるとみている。

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