独高級車大手BMW(ミュンヘン)は18日、米スパータンバーグ工場で開催した監査役会でオリバー・ツィプセ生産担当取締役(55)を次期社長に指名した。8月16日付で就任する。ハラルド・クリューガー現社長(53)は任期満了を待たず辞任する。
今回の人事はクリューガー社長が来年4月の任期満了を以て退任する意向を表明したことを受けたもの。同社長は自動車業界が電動・自動・IoT化という大きな転換期を迎えるなかで、経営の方向性を明確に示すことができず、指導力の弱さを批判する声が強まっていた。BMWはクリューガー体制下で、電動車の分野で持っていた競合に対する優位性を喪失。販売台数でも高級車世界1位の座を競合メルセデスに明け渡した。BMWの社長レースでクリューガー氏に敗れたヘルベルト・ディース取締役(当時)が転出先のフォルクスワーゲン(VW)グループで社長に就任し、電気自動車(EV)の大幅拡充戦略を通して世界の自動車業界をけん引しているのは皮肉なことだ。
ツィプセ次期社長は1991年の入社以来、一貫してBMWで勤務してきたたたき上げの経営者。小型車「ミニ」を生産する英オクスフォード工場の工場長を務めたほか、同社の技術計画や生産戦略を担当してきた。米トランプ政権の保護主義政策を受けて、関税引き上げの影響を緩和するグローバルな生産体制を構築するなど、実行力には定評がある。
ノルベルト・ライトホーファー監査役会長(前社長)は「指導力のある戦略家・分析者であるオリバー・ツィプセ氏が社長に就任することで、BMWグループは未来のモビリティの構築でさらなるインパクトを与えるでしょう」と述べ、その手腕に期待を示した。