欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は25日、追加利下げと量的金融緩和の再開を検討していることを明らかにした。景気減速とインフレ率の低下が懸念されているためで、9月にも実施を決める見通しだ。
ユーロ圏では米中貿易摩擦の激化や中国など新興国経済の不調、英国のEU離脱をめぐる混迷などで景気減速の懸念が増大。物価も上がりにくい状況が続いており、インフレ率は1.3%と、ECBが目標とする2%弱を大きく割り込んでいる。
ドラギ総裁は定例政策理事会後の記者会見で、ユーロ圏の景気見通しが「どんどん悪化している」と発言。特に製造業の経営環境が厳しくなっており、ドイツなど経済が製造業の輸出に大きく依存する国の景気悪化への懸念を表明した。インフレ率についても「現在の水準は容認できるものではない」としている。
そのうえで、「我々は行動するつもりだ」と述べ、追加利下げを示唆した。昨年末に打ち切った異例の量的金融緩和(ユーロ圏の国債などの買い入れ)の再開を検討するようECBの担当スタッフに指示したことも明らかにした。
ECBは主要政策金利を0%とし、中銀預金金利をマイナス0.4%まで引き下げる超低金利政策を続けてきた。ユーロ圏の景気回復を受けて、金融政策の正常化に乗り出した時期もあったが、世界的に景気の先行き不安が広がり、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが確実となるなか、方針転換を迫られた格好だ。中銀預金金利のマイナス幅を拡大するとみられる。
ドラギ総裁は10月に任期が切れる。このため、9月12日に開かれる次回の理事会で利下げ、量的緩和再開を決めるとの観測が広がっている。