ドイツの対英貿易が縮小している。英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる混乱が響いているためで、1~5月の輸出高は前年同期比2.3%減の約350億ユーロに後退。輸入高は6.1%減の150億ユーロへと落ち込んだ。英国では強硬離脱派のボリス・ジョンソン前外相が24日に首相に就任したことから、経済界では先行き懸念がこれまで以上に強まっている。独商工会議所連合会(DIHK)への取材をもとに『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
1~5月の対英貿易総額は500億ユーロで、英国は国別ランキングで7位となった。昨年は同6位、一昨年は5位に付けており、同国との貿易は縮小傾向にある。
英国ではEUと新協定を締結したうえで離脱することを目指すテリーザ・メイ前首相が議会の支持を得られず退任に追い込まれた。これを受けて与党・保守党は後任者を選ぶ選挙を実施。ジョンソン前外相は23日の決選投票で対立候補のジェレミー・ハント外相を大差で破り新党首に選出され、翌日に首相へと就任した。
英国の欧州離脱期限は当初3月29日となっていたが、メイ首相(当時)がEUと取り決めた新協定を議会が承認しなかったことから、合意なき離脱とそれに伴う混乱を避けるために10月31日へと延期された。
ジョンソン新首相は新たな協定をEUと結んだうえで離脱する意向を示しているものの、新協定が成立しない場合は「合意なき離脱」も辞さない構えだ。EU側は離脱案に関する再交渉に応じない構えを堅持していることから、11月以降に対する懸念が経済界に広がっている。
DIHKが会員企業を対象に実施したアンケート調査によると、英国事業が今年、悪化するとの回答は70%に達した。英のEU離脱を見据え投資先を同国から他の国に移すとの回答も約13%(8社に1社)と少なくない。
DIHKのエリック・シュヴァイツァー会長は「英国の新政府はブレグジット(英国のEU離脱)がイギリス海峡の両サイドの経済にもたらす悪影響を抑止するチャンスを今なお持っている。企業は明確な運行計画を必要としている」と述べ、英国とEUの経済的な利害を考慮して政策を決定するようジョンソン新首相に促した。