鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップ(エッセン)が国内同業との合併に向けて水面下で動いているもようだ。同社は鉄鋼事業を印タタ製鉄と合弁化する計画を、欧州連合(EU)欧州委員会の強い疑念を受けて断念したことから、独同業との合併を実現し、競争力を高める狙いとみられる。消息筋への取材をもとに経済紙『ハンデルスブラット』が23日付で報じた。関係各社は報道内容へのコメントを控えている。
同紙によると、ティッセンは大手鉄鋼商社クレックナーと共同でプロジェクトチームを作り、合併の可能性を検討している。関係者は「この取り組みは極めて具体的でチャンスは大きい」と明言した。
ティッセンはさらに、同社に次ぐ独鉄鋼2位メーカーのザルツギターとの合併も視野に入れている。ザルツギターのハインツイェルク・フールマン社長が先ごろ、競合との合併に前向きな意向を示したためだ。
ティッセンとタタ製鉄は2017年9月、欧州鉄鋼事業を合弁化することで基本合意し、18年6月に最終合意へとこぎつけた。欧州鉄鋼各社は過剰設備と低価格の中国製品流入を背景に業績不振が構造化していることから、合併を通して組織のスリム化とコスト削減を実現し競争力を強化する狙いだった。
この計画に対し欧州委員会は独禁法上の疑念を表明。両社はこれを受けて譲歩案を提示したものの、同委が不承認の立場を変えなかったことから、5月に合弁化を断念した。
ティッセンはこれに伴い、連結対象から外していた鉄鋼事業を再び決算に組み込み強化する方針を打ち出した。業績が好調なエレベーター事業の新規株式公開(IPO)ないし合弁化で得られる資金の一部を鉄鋼事業の強化に充てる意向だ。