独複合企業ティッセンクルップは22日、欧州連合(EU)の欧州委員会をEU司法裁判所の一般裁判所に提訴したと発表した。インドのタタ製鉄との欧州鉄鋼事業統合を承認しなかったことを問題視している。同社は声明で、欧州委が統合計画の可否をめぐる審査で従来とは別の基準を採用し、不当に差し止めたと批判した。
ティッセンクルップとタタは2017年9月、欧州の鉄鋼事業を統合することで基本合意。18年6月に最終合意し、折半出資の合弁会社「ティッセンクルップ・タタ製鉄」をオランダに設立することになった。誕生する新会社はアルセロールミタルに次ぐ欧州2位の鉄鋼メーカーとなるはずだった。
しかし、欧州委は両社が欧州の主要なフラット炭素鋼、電磁鋼の供給事業者で、統合によって自動車用の鉄鋼製品、缶用メッキ鋼、多様な分野で使われる方向性電磁鋼で寡占状態となり、価格上昇を招く恐れがあると判断。6月に統合を認めない決定を下していた。
両社は欧州委の決定に先立つ5月、承認を取り付けることができないのが確実になったとして、統合計画を断念した。今回の提訴は、統合復活に向けたものではなく、欧州委の判断の是非をめぐる形式的な訴訟となる。