中小企業支援戦略を経済相が発表、税負担など軽減へ

ドイツのペーター・アルトマイヤー経済相は8月29日、中小企業の支援に向けた「中小企業戦略」の概要を発表した。同経済相に対しては中小企業を軽視しているとの批判が出ていたことから、これを踏まえて支援方針を打ち出した。同相は「ドイツ企業の99.5%は中小企業だ。これらの企業は全売上の約35%、全雇用の60%弱を創出している」と述べ、中小企業が果たす経済・社会的な役割の大きさを強調した。

同戦略の中心をなすのは中小企業を取り巻く枠組み条件の改善だ。具体的には◇税・社会保障費負担の軽減◇法令で義務づけられた煩わしい手続きの簡素化によりコスト負担を10億ユーロ以上、軽減する◇専門人材不足問題の解決◇事業のデジタル化や技術革新の支援◇労働規制の柔軟化◇中小企業政策を迅速に推し進める目的で関係省庁の意見を調整する「中小企業次官委員会」を設立する――意向を表明した。経済界からは「適切なアクセントだ」(独商工会議所連合会=DIHK=のエリック・シュヴァイツァー会長)といった肯定評価が出ている。

アルトマイヤー経済相は2月、同国と欧州連合(EU)の経済競争力強化に向けた長期戦略「国家産業戦略2030」を発表した。中国の台頭やIT分野における米国の優位性を背景に欧州の地盤沈下が進むのを阻止し、経済・技術面での主導権を獲得することを狙ったものだ。

同相はこのなかで、独仏西英の4社の合併で成立した欧州航空宇宙大手エアバスを手本に、グローバルプレイヤーの創出を積極的に推し進めていく意向を表明。中国国営2社の合併で誕生した中国中車(CRRC)に対抗するために独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手アルストムが計画する鉄道事業統合を強く後押しした。

これに対し経済界からは、経済相の政策は大企業支援に偏っているとの批判が噴出。解任を求める声も出ていた。

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