「試し労働」中に怪我、労災は適用されるか

ドイツ語に「プローベアルバイト(Probearbeit)という言葉がある。試用期間を意味する「プローベツァイト(Probezeit)」と似たような響きだが、両者には大きな違いがある。

プローベツァイトは無期雇用の正社員として採用する前に試しで採用する期間(通常6カ月)を指す。この期間中は◇有給休暇を取れない◇労働契約を労使双方が予告期間抜きで解除できる――といった点で正社員と違いがあるものの、賃金・給与を受け取る被用者である点では違いがない。

これに対しプローベアルバイトは求人広告などの応募先企業で「試しに働く」ことを指す。期間は1日から数日。この「試し労働」で働く者は被用者ではないため、給与も出ない。応募先企業が働き具合を見て「この人物ならOK」と判断すれば、被用者として採用されることになる。

では、試し労働の最中に怪我をした場合、労災は適用されるのだろうか。それとも、被用者でないため適用されないのだろうか。この問題を巡る係争で社会保障問題の最高裁である連邦社会裁判所(BSG)が8月20日の判決(訴訟番号:B

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R)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は廃棄物処理会社で試し労働を行った者が、労災機関を相手取って起こしたもの。原告は同廃棄物処理会社の人材募集に応募し、面接の結果、試し労働を行うことになった。具体的にはごみ収集車に同乗し、ごみを収集する業務を行うことを取り決めた。

原告は同業務の最中、ごみ収集車から転落し、頭部を損傷した。このため、労災の適用を申請したところ、被用者でないことを理由に拒否されたため、提訴した。

原告は下級審を含むすべての審級で勝訴した。最終審のBAGは判決理由で、原告は労災保険の適用を受ける被用者には当たらないとしながらも、廃棄物処理会社の意向を受けて同社の業務を行ったことを強調。原告は「被用者のような存在」として労災保険の適用を受けるとの判断を示した。

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