事業所委が閲覧する給与リスト、匿名は可能か

従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)には全従業員を対象とした給与リストを閲覧する権利がある。これは事業所体制法(BetrVG)80条2項第2文に基づくルールで、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)の判例も確定している。では、事業所委に雇用主が提示するリストを匿名化することは認められるのだろうか。この問題を巡る係争でBAGが5月の決定(訴訟番号:1

ABR

53/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は病院の事業所委員会が雇用主を相手取って起こしたもの。同病院では電子文書の形で従業員の給与リストを作成していた。リストには氏名、業務の種類、手当を含む給与支給額が記載されていた。

雇用主は同リストを、各従業員の氏名を伏せたうえで事業所委に提示した。匿名化の根拠としては◇事業所委が給与リストを実名入りで閲覧する権利は、BetrVG80条2項第2文の規定から発生しない◇実名入りリストの閲覧を事業所委に認めることは欧州連合(EU)一般データ保護規則(GDPR)に抵触する――を挙げた。

原告の事業所委員会はこれを不当として提訴。最終審のBAGは訴えを認める決定を下した。決定理由で裁判官は、給与が公正に支給されているかどうかをチェックするという事業所委の任務を遂行するためには、誰がどうゆう名目で給与や手当をいくら受け取っているかを知る必要があると指摘。匿名のリストではこの任務を遂行できないとして、被告雇用主に実名リストの提示を命じた。

また、実名リストの閲覧はGDPR4条に定める個人データの加工に当たるとしながらも、事業所委の業務に必要な場合は認められるとの判断を示した。

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