解雇訴訟中の被用者、有給休暇の権利はどうなる?

解雇の取り消しを求めて係争中の被用者については法律上、解雇が成立していない。では同訴訟中の被用者に対し雇用主は有給休暇を与えなければならないのだろうか。この問題を巡る係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月の判決(訴訟番号:9

AZR

321/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は金属業界の企業の被用者が同社を相手取って起こしたもの。同社は2011年2月、原告被用者との労働契約を9月末付けで解除するとともに、契約条件を変更した新たな労働契約の締結を提案した。原告はこれを不服として提訴し、勝訴した。

原告は同勝訴判決が最終確定する前の14年2月6日、13年の年次有給休暇(30日)を2月17日~3月28日に取得することを申請した。これに対し上司は、取得を許可するかどうかを判決確定後に決定するとして申請を却下した。

原告は判決が確定したことを受けて2014年12月と15年2月に改めて13年の有給休暇を申請した。これに対し被告雇用主は、◇年次有給休暇は原則として各年度内に取得しなければならない◇業務上の理由ないし被用者の病気で取得できなかった有給休暇は取得期限を翌年3月末まで延長できる――とした労使契約の規定を根拠に、原告の13年の有給休暇取得権は同年12月末で失効したと主張。原告の申請を却下した。

原告はこれを不当として提訴した。具体的には13年の有給休暇を事後的に与えるか、金銭に換算して支給することを被告に要求した。

原告は一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGで逆転勝訴した。BAGの裁判官が勝訴判決の根拠としたのは、欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)が昨年11月に下した判決だ。

ECJは同判決で、法律で定められた年次有給休暇の期限内に被用者が取得を申請しなかった場合、有給休暇の取得権が例外なく自動的に失効するとしたドイツの判例はEU法に違反するとの判断を言い渡した。

BAGはこの判断を踏まえて昨年12月、有給休暇の取得権(ないし現金換算支給の請求権)が失効するのは、雇用主が被用者に対し(1)未消化の有休の取得を促す(2)取得期限内に消化しないと有休取得権(現金換算支給の請求権)が失効することを明確かつ適切な時期に伝える――という措置を取った場合に限られるとの判断を提示。被用者が有休を申請しなかった場合は取得権ないし現金換算支給の請求権が自動的に失効するとした従来の法解釈を改めた。

BAGは2月判決でこの判断を踏まえ、被告は(1)と(2)の措置を取らなかったとして、原告の13年の有給休暇の取得権は失効していないと言い渡した。

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