独金融大手コメルツ銀行(フランクフルト)は9月26日、先ごろ公表した新経営戦略「コメルツバンク5.0」を経営監督機関の監査役会が承認したと発表した。事業のデジタル化を加速するとともにコストを削減し、競争力を高める狙い。マルティン・ツィールケ頭取は「顧客にとって第一選択の銀行になる」と述べ、魅力ある商品・サービスの提供を通して同行に対する企業・消費者の評価を高めていく意向を示した。
「個人・小事業顧客部門」ではモバイルバンキング事業を強化する。同事業で得られるデータをアルゴリズムで分析し、顧客各人に見合ったオーダーメイドの商品・サービスを提供。また、新規顧客の獲得効率を引き上げる。新規顧客は2023年末までに純ベース100万人以上、増やす目標だ。既存顧客に対しては基本サービスを補完するモジュール型の付加サービスを提供し、収益力の向上につなげる。
インターネット・モバイルバンキングの利用増を背景に実店舗の利用者が減少していることから、国内の支店は200カ所閉鎖して800カ所とする。また、不動産事業を展開する支店を50カ所に絞り込む。
ネットバンキング子会社コムディレクトはコメ銀の個人・小事業顧客部門に統合する。規模の効果を引き出すほか、デジタル分野でコムディレクトが持つノウハウをこれまで以上に活用できるようにする狙い。コムディレクトの顧客はコメ銀の実店舗を利用できるようになる。
国際事業を展開する企業にサービスを提供する「企業顧客部門」では既存顧客との取引を拡大するとともに新規顧客を大幅に増やしていく意向で、営業要員をドイツだけで150人強、増強する。ドイツおよびユーロ圏の一部の国での顧客数を現在の約100社から500社以上に拡大する目標だ。各種のプラットホームを統廃合し、国際取引を可能な限りドイツ語のプラットホームで行えるようにすることも計画している。
これらの措置に伴いフルタイム勤務の行員数を約4,300人整理する。戦略分野ではおよそ2,000人の新規雇用を創出することから、純ベースでは人員削減規模が2,300人程度となる。
組織再編とリストラには16億ユーロを計上する。そのうち7億5,000万ユーロをデジタル化、ITインフラ、事業の拡大に投資。残り8億5,000万ユーロを人員削減と支店の統廃合に充てる。投資・リストラ資金を確保するためにネットバンキングに強いポーランド子会社mバンクを売却する。
コムディレクト株は上場されている。コメ銀は保有株比率が82%にとどまることから、統合の準備として株式公開買い付け(TOB)を実施し完全子会社化を目指す。同株を、新経営戦略発表前日(19日)の終値を25%上回る1株当たり現金11.44ユーロで買い取る。
同行は新戦略を通して2023年までにコストを約6億ユーロ圧縮する。また、銀行の危機対応能力の指標である有形株主資本純利益率(RoTE)を4%以上へと引き上げる。