Ifoなど有力経済研究所は2日に公表した共同作成の「秋季経済予測」で、国内総生産(GDP)見通しを引き下げた。景気が従来の予想を大幅に上回るスピードで冷え込んでいるため。前回予測(春季予測)では成長の弱まりを一時的としていたが、今回は来年の成長率も大きく下方修正しており、低迷は長引く見通しだ。
ドイツ経済はリーマンショックに伴う世界的な不況からいち早く回復し、その後ほぼ10年間に渡って高い成長を続けてきた。だが、米トランプ政権が引き起こした中国や欧州連合(EU)との通商摩擦を受けて、世界の貿易は昨年秋以降、縮小。今年1~7月の米国の対中輸出高は前年同期比で18%、中国の対米輸出高は同12%落ち込んだ。英国のEU離脱をめぐる混乱もあり、企業は世界的に設備投資を抑制している。
こうした状況は貿易大国ドイツを直撃。製造業生産は昨年半ばから減少傾向にあり、「予測」は「製造業は景気後退局面にある」と断言した。特に投資財産業が大きな痛手を受けている。また、企業向けサービス業界にも悪影響が出ており、第3四半期(7~9月)のGDPは前期に引き続き縮小し、同国経済は景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)に入る見通しだ。
「予測」はこうした認識に基づき、今年の成長率を前回の実質0.8%から0.5%へと引き下げた。下方修正は2度目。昨年秋には1.9%との予測を提示していた。来年についても前回の1.8%から1.1%へと0.7ポイント引き下げている。
成長率を押し下げるのは外需と設備投資で、今年の輸出成長率は昨年の2.1%から0.9%へと縮小。設備投資の伸び率は4.4%から0.7%へと低下する。個人消費が安定的に推移する見通しのため、ドイツ経済が恐慌に陥ることはないとしている。
ただ、製造業を中心に人員削減の動きが出ていることから、これまで長く低下してきた失業率はやや上昇する見通しだ。今年は昨年の5.2%から5.0%に下がるものの、来年は5.1%へと高まる。
インフレ率はエネルギー価格の下落を受けて、昨年の1.8%から今年は1.4%に低下する。