フォルクスワーゲン―トルコのシリア侵攻で工場建設撤回も―

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)がトルコに工場を建設する計画が宙に浮く可能性が出てきた。トルコがシリアへの侵攻を開始したためで、広報担当者は15日、メディアの問い合わせに「新工場建設の最終決定は取締役会によって延期された」ことを明らかにした。VWの監査役を務める独ニーダーザクセン州のシュテファン・ヴァイル首相は同日、「(シリア侵攻が行われている)この条件下でVWがトルコに十億ユーロ規模の投資を行うことは考えられない」と明言し、計画撤回の可能性もあることを示唆した。

トルコは9日、隣国シリアへの軍事侵攻を開始した。同国北部を実効支配するクルド人の武装組織YPGを掃討したうえで「安全地域」を設置し、自国に滞在するシリア難民を帰還させる狙い。ただ、不安定な中東情勢を一段と悪化させる懸念が大きく、欧米諸国から強い批判が出ている。米国はトルコに制裁を加えるほか、トルコ製鉄鋼製品の追加輸入関税を現在の25%から50%に引き上げる意向だ。ドイツのハイコ・マース外相は、トルコへの新たな武器輸出を承認しない方針を表明した。

VWのアンドレアス・トストマン生産担当取締役は9月26日、「我々は現在、交渉の最終段階にある」と述べ、新たな東欧工場をトルコに設置する見通しを明らかにした。今月初旬にはトルコ東部イズミル近郊のマニサで子会社の商業登録を行っており、本来の予定では建設の正式決定を今月中旬に下すはずだった。

だが、トルコのシリア侵攻で状況が一転。広報担当者は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に「状況を注意深く見守っている。成り行きを大きな懸念を持ってみている」と述べた。

ニーダーザクセン州はVWの第2位株主で、同州首相はVWの監査役を務めることになっている。ヴァイル首相はトルコのシリア侵攻を人権と国際法に対する攻撃と激しく批判。現在の状況下ではトルコ工場建設を考えられないとする立場は他の監査役も共有していると述べた。次回の監査役会は11月中旬に開催される。

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