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2019/10/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

社員に提供するパンは所得税の課税対象か

この記事の要約

雇用主から現物支給の形で便宜を受けた被用者の課税所得は、支給された現物の価値の分だけ上乗せされる。

金銭だけでなく金銭的な価値を有するすべての財は原則的に所得税の課税対象となるためである。

この規則に絡んだ係争で、最高裁の連邦財政裁判所(BFH)が7月に判決(訴訟番号:VI R 36/17)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は従業員およそ80人にソフトウエア企業が税務署を相手取って起こしたもの。同社は2008年12月から11年12月にかけて、ブレッツェルやぶどうパン、ライムギパンなどを社員食堂に毎日150個、置き、社員や顧客、来訪者に無料で提供していた。社員は午前中の休憩時間を、社員食堂で情報交換や意思疎通に利用。その際、無料で提供されているパンを食べていた。同社はまた、コーヒーなどのホット飲料も無料で飲めるようにしていた。
被告税務署はこれを課税対象となる朝食(現物支給)と認定。所得税などを追徴しようとしたことから、原告は提訴した。
原告は下級審と最終審のBFHでともに勝訴した。判決理由でBFHの裁判官は、雇用主が被用者に無料ないし割引価格で提供した食事は原則的に賃金に相当するとしながらも、原告が社員に提供した食べ物がパンだけで、バターやジャム、ハムがまったくなかったことを指摘。朝食と言うためには少なくともバターやハムなどパンに付けたり乗せたりするものが含まれていなければならないとして、原告が提供した食べ物は課税対象となり得ない心遣いであり、ホット飲料も含め所得税法上の食事に当たらないとの判断を示した。

雇用主から現物支給の形で便宜を受けた被用者の課税所得は、支給された現物の価値の分だけ上乗せされる。雇用主が被用者に支給するものは、金銭に限らず金銭的な価値を有する他の財も原則的に所得税の課税対象...

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