量子コンピューターで通行ルート最適化、VWがリスボンでデモへ

量子コンピューターを利用して通行ルートを最適化する研究・開発が自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)で進展しているもようだ。同社は11月にポルトガルのリスボンで開催される技術イベント「ウェブサミット」でデモンストレーションを行う。経済紙『ハンデルスブラット』が関係者などへの取材をもとに23日、報じた。

量子コンピューターは量子力学の原理を情報処理に応用したコンピューター。特定の複雑な課題を従来型のスーパーコンピューターよりも大幅に早く処理できることから、幅広い分野での実用化が期待されている。

都市の渋滞解消や通行ルートの最適化はそうした分野のひとつ。VWは3年前から研究を進めており、その成果をリスボンで披露する。

同社は「クォンタム・トラベル」と命名したバス9台を投入し、空港から市内のウェブサミット会場へと運行する。その際に走行するルートを匿名化された通信データなどをもとに量子コンピューターが割り出す。交通状況を30秒おきに分析し、走行ルートを2分毎に車両へと送信する。VWのIT統括責任者であるマルティン・ホフマン氏は「移動時間が大幅に短縮される」と自信を示した。

VWはカナダのスタートアップ企業Dウェーブの量子コンピューターを使用する。アルゴリズムの開発は自社で手がけている。

ザールラント大学のフランク・ヴィルヘルムマオホ教授は、量子コンピューターを利用したナビゲーションサービスは、これまで価格が競争の決め手となっていた移動サービス市場に新しい風をもたらすとの見方を示した。VWは将来的に大都市のすべての交通参加者にナビサービスを提供することを視野に入れている。

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