従業員を代表する事業所委員会(Betriebsrat)のメンバーが業務上の理由で勤務時間外に事業所委の活動を行った場合、同活動に要した時間は有給の勤務免除の形で相殺されなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)37条3項に記されたルールである。このルールを巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月の判決(訴訟番号:
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AZR
396/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はメーカーで事業所委員を務める被用者が同社を相手取って起こしたもの。同社の工場は早番、遅番、夜勤の3シフト体制で運営されており、原告は1週目を早番、2週目を遅番、3週目を夜勤で勤務。4週目は休暇扱いとなり、その後再び早番、遅番、夜勤の順で勤務している。
被告メーカーがシフト勤務を採用している関係で、事業所委の各メンバーの勤務時間帯はまちまちだった。このため、事業所委の活動を勤務時間外の行うメンバーは必ず発生。原告の場合は休暇週の初日に事業所委の活動が行われることが多かった。
被告はこの事情を踏まえ、休暇週の初日に事業所委の活動がある場合は、夜勤最終日の勤務(8時間)を有給で免除。これにより、BetrVG37条3項の義務を履行していると考えてきた。
だが、原告はそうは考えず、休暇週の初日に行った事業所委の活動、計17時間強を労働時間口座の貯金として取り扱うことを要求。提訴した。
原告は一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGは逆転勝訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、相殺の請求は何かが起きた後にしか行うことができないと指摘。事業所委の活動に伴う有給の勤務免除という相殺を同活動の前に行うことはできないとして、同活動前の夜勤最終日を相殺に充てていた被告の措置はBetrVG37条3項の義務履行に当たらないとの判断を示した。事業所委の活動に要した時間が確定しなければ、相殺に必要な時間は定まらないとの判断も付け加えた。