独印が戦略パートナーシップ、米中をにらみ

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は1~2日の2日間、インドを公式訪問し、両国の第5回合同閣議を共同開催した。自由や人権といった価値を欧州と共有しない中国が台頭するなかで、中国にほぼ匹敵する人口を持つインドと協力関係をこれまで以上に緊密化することが狙い。トランプ大統領の下で民主主義陣営の盟主であるはずの米国が単独行動主義(ユニラテラリズム)へと傾いていることから、多国間主義(マルチラテラリズム)の陣営を強化することも目指している。

ドイツは戦略的に重要な国であるフランス、イスラエル、ポーランド、中国などとの間で合同閣議を開催。インドとは2年おきに実施している。

中国は現実やインターネットでの市民・企業の動きを監視したうえで、それぞれを数値で評価する「社会信用システム」の導入を準備するなど、共産党が経済・社会の全領域をコントロールする統制体制を強化している。こうした方向性に「開かれた社会・市場経済」を是とする欧州の政財界は危惧を抱いており、ドイツ政府は中国を基軸に据えた従来のアジア外交を修正。日本との関係強化などに乗り出している。

この文脈でインドとの関係も緊密化していく意向で、共同声明には「共通の価値、民主主義の諸原則、自由で公正な貿易、規則を基調とする国際秩序、ならびに相互の信頼と尊敬に基づいて独印戦略パートナーシップを構築する」との一文が盛り込まれた。インド政府は独ハイコ・マース外相が提唱する「多国間主義者の連盟」に加わる意向を表明した。

個別的には人工知能(AI)研究、環境・温暖化対策、高速鉄道、武器輸出・安全保障、デジタル農業などの分野で協力することで合意した。

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