風力発電機の解体が21年から本格化、ブレードのリサイクなどに課題

ドイツ連邦環境庁(UBA)はこのほど公表したレポートで、風力発電機の解体、撤去、リサイクルに伴う課題を指摘した。同国では2021年から風力発電機の処分が本格化すると予想されることから、問題点を事前に指摘して、国(連邦)や州に対応を促す考えだ。炭素繊維複合樹脂(FRP)製ブレードのリサイクルと、処分のための準備金不足を特に大きな問題とみている。UBAのマリア・クラウツベルガー長官は「人と環境を守り、材料を有効にリサイクルするためには解体方法の明確な指針が必要だ」と強調した。

ドイツでは2000年に施行された再生可能エネルギー法(EEG)に基づき、風力発電に助成金が支給されている。助成期間は20年のため、助成金を当初から受けてきた風力発電機は20年末に給付対象から外れることになる。このため21年以降は解体される発電機が急速に増える見通しだ。ドイツで稼働中の風力発電機は現在、2万9,248基に上る(6月時点)。

UBAによると、風力発電機の解体に伴い発生するコンクリートの量は最大で年550万トン、鉄鋼は同100万トンに上る見通し。コンクリートと鉄鋼は量が多いものの、既存のリサイクル施設で十分に処理できる。

一方、FRPで作られているブレードは解体量が年最大7万トンと相対的に少ないものの、FRPの処理施設は国内に1カ所しかなく、風力発電機の解体の本格化に伴い廃ブレードが大量に発生すると処理しきれないのが現状だ。FRPはリサイクルが難しいという事情もある。UBAはこれを踏まえ、廃ブレードの適正処分をブレードメーカーに義務づけることを検討すべきだとしている。

UBAの調査では、解体や撤去に必要な準備金を積み立てていない風力発電事業者が多いことも明らかになった。積み立て不足額は20年台半ばから急速に増え、38年には計3億ユーロを超える見通しという。この問題の解決に向けては、準備金を独立の専門家が定期的に監査するルールの導入を提唱している。

UBAはこのほか、解体作業で大気中に有害物質が放出され、人と環境に悪影響が出ないようにすることも重要な課題と位置づけている。

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