保険大手の独アリアンツは14日、米IT大手マクロソフト(MS)と戦略パートナーシップを締結したと発表した。アリアンツの保険プラットホーム「アリアンツ・ビジネス・システム(ABS)」をマイクロソフトのクラウド「アジュール」に移管したうで、同業企業が利用できるようにする。ABSを利用する企業は事業の簡素・効率化やコスト削減を図ることができる。
保険会社の多くは老朽化した複数のソフトウエアを用いて業務を行っている。このため、異なるソフト間でデータ交換ができないなど問題が多く、手間とコストがかさんでいる。
管理するデータの量が極めて多くなっていることは追い打ちをかける。データの増加に合わせて自社サーバーの容量を拡張すると、IT人材を増やさなければならないうえ、コストも膨らむためだ。
アリアンツとマイクロソフトはこうした事情を踏まえて今回の提携に踏み切った。保険会社はABSを利用することで、ソフトの互換性問題を解消できるうえ、サーバー費用も削減できることから、潜在ニーズは大きい。
アリアンツはABSのソースコードを公開し、同プラットホーム上で使えるソフトを外部のIT事業者が開発できるようにする。ABSの利用企業はそうしたソフトを必要に応じて購入。業務を改善したり顧客サービスの質を引き上げることができる。アリアンツは具体例として、顧客サービス用チャットボット(自動応答ソフト)や人工知能(AI)ベースの保険詐欺認識機能を挙げた。ABSを保険業界の「マーケットプレイス」に発展させる狙いだ。インシュアテック(ITを活用した保険分野のスタートアップ企業)が同マーケットプレイスを活用し、低コストでサービスを開発することも視野に入れている。
オープンプラットホームを立ち上げる機運は幅広い業界で高まっており、マイクロソフトと独自動車大手BMWは4月、産業用のオープンプラットホームを立ち上げると発表した。機械や設備によってシステムが異なるためにデータを有効利用できないという問題を解消し、参加メーカーが製造効率と利益率を引き上げられるようにする考えだ。産業分野でモノのインターネット(IoT)が発展できる環境づくりを目指して、自動車業界の企業だけでなく、他の分野のメーカーにも参加を呼びかけている。