従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)のメンバー(事業所委員)を、解雇予告期間を設定した通常解雇の対象とすることは原則的に禁止されている。事業所委員は職務上、経営者と対立して報復を受けやすい立場にあるためで、解雇が可能なのは解雇がやむを得ない重大な理由がある場合、つまり即時解雇が可能な場合に限られる。これは解雇保護法(KSchG)15条1項で定められたルールで、委員は退任後も1年間は通常解雇され得ない。
ただ、事業所委員が勤務する事業所が閉鎖される場合については、同条4項で通常解雇が例外的に認められている。この4項に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が6月の判決(2
AZR
38/19)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は大手企業N社の「北東地区事業所」で事業所委員を務めていた社員が同社を相手取って起こしたもの。北東地区事業所はハンブルクとブレーメン、ライプチヒの3拠点を統合する形で2016年に設置された。設置の根拠としたのは事業所体制法(BetrVG)3条1項1bの規定。同規定には、企業は労働組合との合意により、複数の事業拠点を1つの事業所に統合できることが記されている。
原告・事業所委員が勤務していたブレーメンの拠点は17年6月7日付で閉鎖された。N社はこれを受けて同拠点の全従業員を整理解雇することを決定。17年11月28日付の文書で、原告に18年6月末付けの通常解雇を通告した。
原告はこれを不当として提訴した。ブレーメン拠点は閉鎖されたもの、同拠点を含む北東地区事業所は存続しており、事業所委員の通常解雇の前提となる事業所の閉鎖は行われていないというのが原告の立場である。
この係争で最終審のBAGは、解雇は妥当だとし、原告敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、事業所体制法3条1項1bに基づいて設置された事業所(複数の拠点を持つ事業所)の概念は同法の枠内でのみ有効だと指摘。この概念を他の法律に適用することはできないとして、解雇保護法上の事業所は「一般的な概念」である各事業拠点(ここではブレーメン拠点、ハンブルク拠点など)を指すとの判断を示した。つまり、ブレーメン拠点の閉鎖を事業所の閉鎖とする判断を示したわけである。