自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)と同社の大株主カタール投資庁(QIA)は14日、電力を動力源とする自動運転車の運行プロジェクトをカタールで共同実施する契約に調印した。VWは同プロジェクトを通して環境に優しくスマートな都市交通のノウハウを獲得。全世界で展開していく意向だ。
「カタール・モビリティー」という名のプロジェクトを、2022年に同国で開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)に合わせて実施する。VWは自動運転機能を装備したVWブランド商用車の電気マイクロバス「ID.BUZZ」35台と大型商用車ブランド・スカニアのハイテクバス10台を提供。首都ドーハのウェストベイ地区で乗客を輸送する。ID.BUZZは定員が4人。大人数の輸送にはスカニアのバスを用いる。
両モデル向けの自動運転システム(SDS)と予約アプリは、VWの自動運転技術開発部門AID(オートノモス・インテリジェント・ドライビング)とモビリティサービス子会社モイア(Moia)がそれぞれ提供する。自動運転に必要な物理・デジタルインフラはVWとQIAが共同開発する。
VWはID.BUZZとスカニアのバスのテストを2020年に開始。21年には試験運行を行い、22年秋から正式運行を始める。
VWのヘルベルト・ディース社長は、リアルな交通環境で自動運転車を運行することで貴重な知見を獲得できると指摘。「このプロジェクトは自動運転実現に向けたわが社のロードマップのジャンプ台になる」と意義を強調した。VWは米自動車技術会(SAE)が定める「レベル4」の自動運転車(運転をシステムに全面的に任せることが可能)を2020年代半ばに実現することを目指している。