ドイツ連邦統計局が15日発表した2019年の国内総生産(GDP)は物価調整後の実質で前年比0.6%増(速報値)となり、伸び率は13年以来6年ぶりの低水準を記録した。米中の通商摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる混乱を背景に世界経済が低迷し製造業を直撃したことが響いた格好で、外需が足を強く引っ張った。
成長率を押し上げたのは消費で、個人消費(民間最終消費支出)は1.6%、政府最終消費支出は2.5%拡大した。投資では住宅ブームなどを背景に建設投資が3.8%増となり、伸び率は前年の2.5%を上回った。設備投資は製造業の不振を受けて0.4%増と小幅な伸びにとどまった。前年は4.4%拡大していた。
輸出は0.9%増で、伸び率は前年の2.1%から低下。輸出も前年の3.6%から1.9%へと縮小した。
GDP成長率0.6%に対する項目別の寄与度をみると、個人消費は0.8ポイント、政府最終消費支出は0.5ポイント、建設投資は0.4ポイントに達した。設備投資は0.0ポイント。在庫調整がマイナス0.9ポイントだったことから、内需全体では1.0ポイントにとどまった。需要の減少を受けて企業の在庫取り崩しが進み、成長率が押し下げられた格好だ。
外需(輸出-輸入)は輸出の伸びが輸入を下回ったことから、マイナス0.4ポイントとなった。
19年の成長率は前年の1.5%、前々年の2.5%を大幅に下回ったものの、ドイツ経済は1990年の統一後初めて10年連続でプラス成長を確保した。
08~18年の実質GDP成長率は平均1.3%で、19年を大きく上回った。
国(連邦)と州、市町村、社会保険機関を合わせた財政収支は498億ユーロの黒字だった。黒字は8年連続。過去最高となった前年の624億ユーロを下回ったものの、水準は依然として高い。財政黒字の対名目GDP比率は1.5%に上った。
統計局は記者会見で、19年第4四半期(10~12月)の実質GDPがやや増加したと見方を示した。19年は第二四半期(4~6月)に前期比0.2%減となり縮小へと転じたものの、第3四半期(7~9月)は0.1%増とプラス成長に転換。景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)入りがかろうじて回避された。
20年も低成長に
ドイツの成長率は20年も低調にとどまる見通しだ。米中の通商摩擦が両国の「第一段合意」でひとまず緩和されるものの、イランと米国の対立を受けて世界の石油供給が不安定化する可能性を排除できないなど、リスク要因はなくならないためだ。国際通貨基金(IMF)は20日発表した最新の世界経済見通しで、世界全体の20年の予想成長率を3.3%とし、前回(10月)から0.1ポイント下方修正した。貿易依存度が高いドイツも1.2%から1.1%へと引き下げている。
同国の20年の成長率は祝日が少ない効果で0.4ポイント程度、押し上げられる見通し。このため営業日数を加味した成長率は19年と同水準にとどまると目されている。