パワー・ツー・ガスのパイロット施設、独北部に建設へ

蘭国営送電会社テネットと蘭ガス輸送会社ガスニーの独法人ガスニー・ドイチュラント、独ガス輸送会社ティッセンガスの3社は20日、風力発電で生み出された電力から水素とメタンガスを生産するパワー・ツー・ガスのパイロット施設を独北部のディーレに設置する方針を決定したと発表した。現地の自治体と今後、協議していく。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーを用いた発電は発電量が天候に大きく左右される。このため、同発電量が少ないときは火力など在来型発電で供給不足を補っている。また、例えば風が強く風力風車の発電量が多くなりすぎると送電網に過度の負担がかかり、大規模な停電につながる恐れがあることから、送電網事業者は風力発電の停止を要求。発電できなかった分の補償金を風力発電パークの運営事業者に支払っている。そのコストは電力料金に上乗せされて最終消費者が負担する。

強風時に発電した余剰電力を気体燃料に変換して貯蔵する技術を商業的に確立すれば、エネルギーを有効活用できるうえ、無駄なコストも大幅に削減できることから、複数の企業がパワー・ツー・ガスの実現に向けて準備中。テネットとガスニー、ティッセンガスの3社は「エレメント・ワン」、独送電大手アンプリオンと独ガス輸送大手オープン・グリッド・ヨーロッパは「ハイブリッジ」という名のパイロットプロジェクトをそれぞれ計画している。

エレメント・ワンでは陸上・風力発電で生産した電力を水素とメタンガスに変換し、ガスをルール地方にパイプラインで輸送するほか、地下貯蔵施設に供給。水素を燃料電池車向けのスタンドに提供する。同プロジェクトを2022年から開始する意向で、3社は昨秋、監督官庁の連邦ネットワーク庁に認可申請を提出した。

ただ、これを承認すると、エネルギーの輸送事業者である3社がその生産も行うようになり送発分離の原則に抵触することから、同庁は慎重に審査を進めているもようだ。この事情はハイブリッジにも当てはまる。